『感染の令和』と紅い女神【佐藤健志】
佐藤健志の「令和の真相」33
◆不可解な時代の全貌
新しい評論集『感染の令和 または あらかじめ失われた日本へ』が、2021年12月22日、KKベストセラーズより刊行されました。
2018年の『平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』で展開した考察を踏まえつつ、さらに視野を広げることで「低迷と衰退に歯止めがかからないのに、多くの国民は現状維持を望んでいるとしか思えない振る舞いをする」という、不可解な時代の全貌をとらえようとするもの。
内政、外交はもとより、経済、社会、思想、そしてもちろんコロナと、縦横無尽に論じました。
おかげで『平和主義は貧困への道』よりも格段にスケールアップ、全536ページの大作に。
しかも、これだけ幅広い事柄について論じること自体が、論点をいっそう深めるんですね。
新書が一品料理とすれば、本書はフルコース。
その意味で、コスパも非常にいいと思います。
というわけで、内容を紹介してゆきたいのですが、みなさんをご案内するガイドに登場してもらいましょう。
本のカバーも飾った「紅い女神」。
国の生命力を象徴するかのごとき聖火と、運命の輪を思わせる観覧車の前で両腕を広げている彼女です。
妖しくも美しい女(ひと)ではありませんか。
この女神、戦後日本人が抱いた夢や理想を体現する存在です。
いわば戦後平和主義の化身。
本書は全体のテーマを提起するプロローグ「令和はすべてが許される」で始まり、以後「平成までを総括する」「黄昏の現地妻国家」「崩壊する経済と社会」「世界観をめぐる逆説」「パンデミックと国の行く末」の五部構成となっているものの、各セクションの扉には彼女が現れて、みなさんを時代の深淵へと導きます。
同時に第一部から第五部までの扉をたどると、紅い女神がもともとはどんな少女で、どうやって今の姿になったのかも見えてくる。
それがつまり、戦後日本の夢や理想がたどった旅路なのです。
彼女の物語を追ってゆきましょう。